感無量のうれし涙だ。伊調は表彰式後、妹を見つけると、顔をくしゃくしゃにして歩み寄った。「馨、これ」と宿敵メルレニを倒して勝ち取った金メダルを見せると、もう言葉にならない。身長差9センチ(伊調は157センチ)の妹に肩を抱かれて、また泣いた。まるで姉と妹の立場が逆転したようだ。
惜敗したアテネの悔しさを、やっと晴らすことができた。「3年間長かったし、つらかった」。出産で1年以上、戦列を離れていた女王メルレニが今年復帰した。相手は準決勝まで4戦中3試合をフォール勝ちと健在ぶりを証明。対して、伊調は準々決勝でウクライナから国籍変更したスタドニクに苦しめられるなど、接戦が続いた。
妹の「自分のためだけに戦って」との言葉に励まされて決勝に臨んだ。第3ピリオドまでもつれ込む接戦、最後の気力を振り絞って繰り出した片足タックルが決まった。2−1で競り勝って、見事にリベンジした。栄監督も「戦略、スタミナ勝ち」と伊調の努力をたたえた。
アテネで敗れた後「表彰式とかの記憶がない」と言う。期待された姉妹金メダルの夢を果たせず、妹の金と自分の銀メダルの差を痛感。その無念を晴らすため、再び馨と北京を目指してきた。馨は仮想メルレニとしてスパーリング相手を務めてくれた。昨年大会では3年ぶりのダブルVを達成。アジア選手権(5月)の計量失格や、今回の約6キロの過酷な減量も、妹の励ましがあったからこそ耐えられた。
北京五輪の切符も手にした。伊調は「これで、北京で姉妹金メダルの夢に1歩近づけた」と笑った。あとは「姉に勇気をもらった」と言う妹の金メダルを待って、バクーから二人三脚で北京への道を歩む。
【日刊スポーツ】




